【初めに】
私は2018年に医療部会に入会し、6年目を迎えます。5年間の医療部会での活動の中で、多くの仲間、先輩諸兄との出逢いや、貴重な成長の機会をいただきましたが、その中でも特に心に残っている事業が二つあります。一つ目は、入会1年目に参加した創立55周年記念式典、二つ目は入会2年目に担当副部会長として携わったカンボジアミッションです。創立55周年記念式典では、彬子女王殿下のご臨席の下、多くの御来賓にご出席いただき盛大な式典が開催され、長きに渡り歴史を紡いできた医療部会のスケールの大きさを実感させていただきました。2019年のカンボジアミッションでは、担当副部会長として事業を担当させていただき、先輩諸兄からの叱咤激励を受けながらの事業構築や、早朝からの長時間の劣悪な環境下での移動等、苦しいことも多々ありましたが非常に貴重な経験をさせていただきました。この二つの事業を始めとした医療部会での活動は私にとってかけがえのない経験となっており、医療部会という組織や、共に活動する仲間、先輩諸兄への感謝を胸に、部会長の職を務めさせていただく決心をいたしました。
2020年から続く新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、我々医療部会の活動にも甚大なる影響を与えてきました。医療従事者として現場で奮闘する会員を多く預かっているという医療部会の性質上、青年会議所本体や他の業種別部会以上に大きな影響を受け、思い描くような活動ができない時期が続いてきました。その結果は、事業、例会等への参加率の低下という形で如実に表れています。
そのような中で、今年度は創立60周年を迎えます。また、未だ予断を許さない状況ではありますが、海外への渡航制限についても緩和が進み、2020年以降中止が続いてきたカンボジアミッションについても実施できる見通しが立ちつつあります。創立60周年記念式典と4年ぶりのカンボジアミッションの復活という二つの大きな事業を控え、組織としての団結力が試される1年となります。パンデミックにより疲弊した中でこのような重要な年を迎えるという現状を悲観的に捉えるのではなく、組織が一丸となり力を合わせて乗り越えることにより、さらなる発展を遂げることのできる絶好のチャンスであると捉えていきたいと考えています。2023年度は会員の参加率の向上に重点的に取り組み、次の5年、10年先に向けて発展し続けられる組織の実現に向けて1年間邁進して参ります。
【60周年~5年先、10年先の未来への第一歩~】
我々医療部会は1964年に設立され、2023年に創立60周年を迎えます。未だ新型コロナウイルス感染症は収束する兆しを見せず、先行きが見通せない中で迎える60周年の節目となりますが、そのような中でも、65周年、70周年、さらにその先の未来へ向けて力強く歩んでいくために、組織一丸となって創立60周年記念事業の成功に向けて邁進していくことが必要です。
周年記念式典は、それぞれの時代に組織の発展のために尽力し、多くの苦難を乗り越えてこられた先輩諸兄や、ご助言や事業へのご協力等、様々な形でご助力を賜った関係団体各位に向けての感謝をお伝えするとともに、今後益々のご理解ご協力をお願いさせていただく場となります。また、我々現役会員にとっては、これまでの医療部会の歴史、伝統を振り返り、これからの医療部会の在り方について考え、今後の活動に向けての決意を新たにする場でもあります。さらに、記念講演では、60周年に渡って多くの関係団体と手を携えながら活動してきた医療部会だからこそ実現できる、医療福祉に関する最新の知見を学ぶ機会を提供します。このような創立60周年記念式典を、多くの会員の参画の下、組織一丸となって創り上げ、多くの先輩諸兄、皇族を始めとする御来賓をお招きして盛大に開催いたします。
また、創立50周年である2013年に「成熟した社会」と題して創立50周年提言を行ってから10年が経ちました。この10年間で、医療福祉を取り巻く環境は目まぐるしい変化を遂げ、10年前には全く想像することもできなかった状況が訪れています。そのような傾向は今後もさらに加速していくと考えられ、10年後を正確に予測することは困難ではありますが、医療福祉に携わる青年経済人が集まる組織であることを活かして多様な専門性を持つ会員の知識を結集し、有識者の知見もいただきながら今後10年間の未来を見据えた提言の作成に挑みます。情報科学技術の急速な発展により進行していく医療DXの導入、医療やその周辺技術の進歩により実現化しつつある再生医療や遺伝子治療等の新しい医療技術への対応、ウィズコロナ・アフターコロナの時代における医療福祉の在り方等について、新たな提言をまとめ、創立60周年提言として発信を行います。
【海外ミッション~医療部会の象徴~】
私は、2019年度に担当副部会長として参加したカンボジアミッションで多くの貴重な経験をさせていただき、大きな成長の機会をいただきました。同時に、非常に過酷な環境の中にも関わらず、全ての参加者がいっさい手を抜くことなく全力で事業に取り組む姿を見て、この事業にかける情熱を感じさせていただきました。先輩諸兄により築き上げられ、受け継いでこられた海外ミッションは、医療部会の象徴とも言うべき、私たちにとって大きな意味を持つ事業であると考えています。しかしながら、2020年から2022年までの3年間はカンボジアミッションを行うことができず、ほとんどの現役会員がカンボジアミッションを経験したことがないというのが現状です。
そのような中で、私はカンボジアミッションの復活は周年記念事業に並ぶ2023年度の医療部会の大きな柱となる事業として捉えています。ほとんどの現役会員がカンボジアミッションを経験したことがない中での事業構築に向けて、多くの困難が待ち受けていることは想像に難しくありません。しかしながら、その困難を乗り越えた先に、会員一人ひとりにとっての多大なる成長の機会と、言葉には言い表せないほどの感動が待っていると確信しています。今後の医療部会の更なる発展にために、医療部会に所属していただいている会員一人ひとりの成長のために、困難に打ち勝ってカンボジアミッションの復活を実現させ、一人でも多くの会員に成長の機会と感動を持ち帰っていただきたいと考えています。
一方で、カンボジアミッションが実施できなかった3年の間にカンボジアの社会情勢も大きく変化し、カンボジアミッションにおけるパートナーであるJCIチャットモックも青年会議所として成長し、単独で事業を構築できるだけの力を身に付けてきています。私たち医療部会としての支援は、魚を釣り与え続けるだけではなく、魚の釣り方を教え、自立した事業実施を可能にすることが重要です。そのような観点からすると、今後もカンボジアでのミッションを継続するのか、近い将来にJCIチャットモックの自立を見届けて別の国・地域でのミッションへと移行していくのかを考えるべき時期に来ていると考えます。カンボジアやJCIチャットモックの現状を肌で感じ、今後の海外ミッションの在り方を考える機会としても今回のカンボジアミッションは重要な事業となります。
一度途絶えてしまった海外ミッションを復活させ、5年先、10年先の海外ミッションの発展に向けた礎を築くために、多くの会員の参画の下、組織一丸となって取り組んで参ります。
【魅力あふれる参加したくなる医療部会の実現】
冒頭で述べた通り、新型コロナウイルス感染症による甚大な影響により、会員の参加率は大幅に低下しています。創立60周年記念事業やカンボジアミッションの成功のためには多くの会員が参画し、一丸となって取り組んでいくことが必要不可欠です。また、この二つの事業をはじめとして医療部会は多くの発展と成長の機会で溢れており、非常に魅力的な組織ではありますが、参加者が少なければ組織の発展や会員個人の成長に繋げることはできません。そのため、参加率の向上は今年度最優先で取り組むべき課題として取り組んで参ります。
2020年度以降の多くの事業が中止やウェブ開催となる中で、それ以降に入会した会員の多くは医療部会の魅力を知る機会に恵まれておらず、それ以前から入会していた会員でも医療部会に向ける熱量が低下してしまっている会員も多いことが、参加率の減少の原因であると考えられます。そのような中で、多くの会員に医療部会の魅力を発信し、事業に参加したいと思っていただくことが重要となります。
医療部会の魅力として、例会等を通じて医療福祉に関する知見を深めることができることや、海外ミッション等を通じた学びの機会が得られること等の組織としての魅力はもちろんですが、共に活動し、汗を流す仲間が持つ会員個人の魅力も重要であると考えております。私自身も、これまで医療部会の活動を続けてきたのは多くの魅力的な仲間との出逢いがあったからです。今年度は、このような会員個人の魅力の発信にも力を入れていきます。
そこで、今年度は、ウェブとリアルを組み合わせ、組織の魅力、会員個人の魅力を発信していきます。ウェブの活用として、SNSやショートムービー等を活用し、事業・例会等の組織の魅力や、所属する会員一人ひとりの魅力発信を行います。リアルでは、地域毎の小規模な交流会等を積極的に開催し、会員同士が膝と膝を突き合わせて語り合い、お互いの魅力を知る機会を生み出します。
医療部会の魅力を伝え参加率を向上させることは、現在の医療部会を取り巻く状況下では決して簡単なことではなく、直ぐに正解に辿り着けるものではないかもしれません。そのような中でも、会員からの意見要望も取り入れつつ、様々な手法を用いて試行錯誤しながら組織の魅力、会員個人の魅力を多くの会員に発信し、魅力あふれる参加したくなる医療部会の実現を目指します。
【結びに】
皆さんは、どうして医療部会に入会されたのでしょうか。どうして今も医療部会の会員として活動しているのでしょうか。私は、医療関係者との人脈を広げ、自分自身の成長や社業の発展に繋げたいと考え、自分自身のために医療部会に入会するという一歩を踏み出しました。しかしながら、冒頭で述べた創立55周年記念式典、カンボジアミッションをはじめとする様々な事業への参加や、多くの仲間、先輩諸兄との出逢いを通じて意識が変わり、現在では共に活動する仲間のために、組織の発展のために活動し、今年度は部会長を務めさせていただく決心をいたしました。
もちろん、自分自身のために一歩を踏み出すこともとても難しく尊いことだと思います。しかしながら、仲間のため、組織のために踏み出す一歩はさらに尊いものであり、自分自身のためだけの一歩よりも、さらに自分自身の成長にも繋がるものだと確信しています。
自分のために、仲間のために、組織のために、一歩前へ共に歩んでいきましょう。

2023年度 日本青年会議所医療部会
第60代 部会長 林 大輔